「かさじぞう」への想い 　私は日本橋から歩いて数十分の距離にある人形町で生まれ育ちました。今では地下鉄が三本も走っていて大変便利になりましたが、昭和二十年代は都電（路面電車）が町の中央を行き来していました。水天宮様の五の日の縁日、べったら市、芳町（現人形町）から担ぎ出される芸者御輿、路地で縁台に腰掛けて悠々と煙草ふかしているおばあさん・・・。そんな光景が色として音として香りとして私の体の中にいっぱいつまっています。今は実家も無くなりましたが人形町は私そのものです。町や人々がかもし出していた何とも言えない、ゆったり穏やかとした心持ち。私の「うたの小径」の出発点にいつも感謝してこれからも歩き続けます。